サイトメガロウイルスの恐怖
知っていた、けど、知らなかった
桃が難聴と診断されて、その理由を探そうと思った。
わたし側にも夫側にも、わたしの知る限りで難聴者はいない。ということは、ひとまず遺伝は否定される。
ほかの原因に「妊娠中のトキソプラズマ感染」「妊娠中のサイトメガロウイルス感染」「出産時のトラブル」「不明」などがあるらしい。
トキソプラズマに関しては、前期と中期で血液検査をしたので問題ない。
サイトメガロウイルスだって、わたしはきっと大丈夫。
出産も、桃の片足首にへその緒が巻き付いていて時間がかかったけれど、それがトラブルだったと産婦人科の先生からは聞いていない。
だから、桃の難聴の原因は「不明」だと思っていた。
でも、調べれば調べるほど怖くなってきた。自分の無知さが激しく情けなかった。
サイトメガロウイルスの脅威を…。
思い当たる節がありすぎる
ありふれたウイルスで、すでに感染していれば問題ない。昔は妊婦の90%が感染済だったので重視されてこなかったけれど、近年は70%程度しか感染済ではないとのこと。
つまり、残りの30%は未感染で妊娠している。
妊娠初期にサイトメガロウイルスに感染すると、お腹の赤ちゃんにいろんな障害を発生させる原因になるんだとか…
その障害の中のひとつに「難聴」がある。
他にも、低体重での出生、小頭症、皮下出血、肝炎などなど…
しかも進行性で、てんかん、発達障害、視力障害があらわれることもあるらしい…。
怖くなった。こんなことが桃の身の上に起きるかもしれない。
軽症から重症まで症状はさまざまらしいんだけれど、現に桃は難聴になっている。
先天性サイトメガロウイルス感染症ではない、と言い切れる理由がない。
だって、わたしは5児の母。8歳~0歳まで、5人の子供がいる。
サイトメガロウイルス感染症を避けるには、
・こどものオムツ交換をしたら手を洗う。
・食べ物も飲み物も食器も共有しない。食事の介助をしたら手を洗う。
・鼻水やよだれを拭いた時も手を洗う。
・おもちゃを触った時も手を洗った方がいい。
・こどもとのキスは避ける。
・部屋を清潔に保つ。
えええええ…
簡単なようで、難しくないか?というか、ほとんど不可能じゃないか?
少なくとも、ウチはできないことが多すぎる。
おもちゃを触った後に手を洗うなんて現実的じゃないよ…
しかも、サイトメガロウイルスの検査なんてしたことない。
こどもたち全員の母子手帳に貼った妊娠中のわたしの血液検査の結果をすべてチェックした。
わたしが過去に受けた健康診断やアレルギーテストの結果も確認してみた。
…ダメだ。検査したことない。
決定的だと思った。
桃は、先天性サイトメガロウイルス感染症だ…
そうに違いない。間違いない。
とりあえず、出産のときのトラブルはなかった。だから症状としては軽い方かもしれない。
でも、もし先天性サイトメガロウイルス感染症だとすると、進行性。
これから、もっともっと症状がでてくるのかもしれない。
大学病院に行くにあたり、桃のへその緒をバッグに忍ばせた。
へその緒の中にある血液で、サイトメガロウイルスの検査ができるらしい。
へその緒の中の血液にサイトメガロウイルスが見つかれば、妊娠中に感染した=先天性サイトメガロウイルス感染症だとわかる。
ただでさえ予約の取りにくい大学病院、1分1秒でも無駄にしたくない。
だから、検査させてくださいと言われたらすぐに渡せるように、へそのを持っていくことにした。
「検査が終わったら、形状は問いませんのでへその緒をご返却をお願いします」と伝えよう。
ウイルスの確認とはいえ、桃とのつながりの証を処分されてしまうのは悲しすぎる。
どんな形であってもいいから、返却だけはお願いしよう…
そう思って、眠りについた。